誰が予想したであろう、甲子園がこんな展開になろうとは。
準決勝の2試合はともに東海勢が制し、決勝へ駒を進めた。
第一試合、常葉菊川-熊本工。大方の予想は勢いに乗る菊川優勢とみていた方が多いだろう。しかしさすがに連戦で疲れがたまっており投手の負担は相当なもの。熊本優位で試合が進む。8回終了時でまだ熊本リード。このまま決まるかとも思ったが、9回の逆転劇。野球は最後までわからない。熊本も春はなかなか成績が挙げられないでいたがこの春はベスト4で大健闘だった。菊川は大健闘どころではないだろう。東海1位チームが決勝に進出である。
第二試合。帝京-大垣日大。ここまで圧勝で勝ち上がってきた帝京。大垣はなにしろ投手が1枚きり、しかも6日で4試合全て完投の超強行軍。さすがに疲れも出るだろう。フォームはばらばら、制球も安定しない、というかあからさまに疲れが見て取れる状態。あたりまえのように初回に帝京打線につかまる。しかし、なんとか2点きりに抑える。これが大きかった。序盤大量点で逃げ切るパターンに持ち込ませなかった。そして1回裏、まるで帝京のお株を奪うような速攻。あっという間に逆転。帝京が先発に3番手の投手を当てたのは大垣をなめていたのだろうか?連続四球でアウトひとつもとれず交代。大誤算だったろう。しかも代わって出てきたのが怪我上がりの主戦投手。エースとはいえ怪我上がりには違いない。怪我の影響はないと本人が言ったところで、あの打たれようを見ると完調とはとてもいえない状態だった。帝京よもやの追いかける展開。大垣森田君の投球は、正直メロメロに近かった。それでも外れてもいいからくらいの気持ちで低めに丁寧に投げたことで、帝京に決定打を打たせなかった。正直ピンチのほうが多い試合だった。森田君にしては信じられないくらいの四死球も与えた。それでも走者がたまって逆転されそうな場面を何度も作りながらも守りきった。さすが守備で選ばれた学校だけのことはある。二塁の平野君などあの小さな身体でファインプレー連発である。
試合のほうは帝京3人目の投手になってから大垣も攻めあぐねる。帝京側としては結晶のために負担を軽くする意味もあってできれば温存したかったのだろうが、4回にすでに引っ張り出すことになった。この投手を大垣が攻められなかったことを考えると、もし先発投手が違っていたら完敗だったかもしれない。ある意味なめられていたことが運までもこちらに味方したといえる。実質東海2位の大垣は東海大会の組み合わせのあや(2枠しかない東海は、静岡1位と岐阜1位が同じ島に割り振られ、準決勝で当たってしまったため。結果的に岐阜2位の中京が決勝へいき選出された)で補欠扱いになり、そのため他校のマークが甘くなった面はあるだろう。大垣にとってはかえってよかったのかもしれない。
それにしても阪口師の采配は見事である。選手操縦術とでも言うのだろうか、劣勢だろうが苦しかろうが、とにかく笑って楽しむ。選手は強豪校と呼ばれる帝京相手に物怖じせず互角に渡り合った。
「勝とうとしなくていいぞ。」「十分に格好はついたから負けて帰ろう。」
とにかくリラックスさせることを最優先にした阪口師の立ち居振る舞い。選手は失敗しても暗くならず前向きに楽しく試合に臨んでいる。
劣勢の状態でも明るいベンチ。細かい失敗など数えればきりがない。スクイズは散々失敗している。それでも笑い続ける監督。この準決勝の試合、時折写る帝京のベンチとは明らかに雰囲気が違った。もう空気が全然違って見えた。
苦しみながらも一人で投げぬいた森田君。この日は150球を超える熱投。それでも決勝も一人で投げたいという。3日連続の試合へ。疲労はピークどころではないだろうが、ここまできたら最後まで楽しもう。
岐阜県勢48年ぶりの決勝。高木守道氏が現役だった頃以来である。半世紀のときを超え、夢の大舞台に岐阜のチームが立つ。
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